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アーサー王大百科

ワース

人物紹介

ワースは、12世紀初頭にジャージ島で生まれたノルマン人であった。ワースは1150年ごろプランタジネット家の寵を得て、1160年にはヘンリー2世自身から"ロマン・ド・ル"という物語の執筆を命じられた。これはノルマンディの公爵たちを扱った韻文による歴史物語であった(ヘンリー2世はノルマンディ公という称号を、母親である"女皇マティルダ"を通じて、征服王ウィリアムから継承していた)。

だが、ワースに最高の名声と永続的な影響力をもたらしたのはアーサー王の"記録"、すなわち"ロマン・ド・ブルート"のほうであった。これはフランス文学にケルトの神話やテーマをもちこんだ最初期の作品の一つである。そればかりか、アーサー王物語のモチーフでももっとも重要な二つ、"円卓"と、アーサーアヴァロンからの帰還をこいねがうブリトン人の切なる期待をも、フランス文学の世界にもたらした。

ワースジェフリー・オブ・モンマスによるアーサー王物語をとり上げ、さらに、「アーサー王伝説のともしびを燃やしつづけている」とワースみずからが称しているブルターニュの語り部から得た要素を交えながら、物語を発展させていった。ジェフリーの『ブリタニア列王記』と同じく、ワースの『ブルータス物語』も記録の範囲を逸脱して、虚構の領域に足を踏み入れている。そして、アーサーを宮廷騎士物語の世界へと近づけている。

図説アーサー王百科

索引

協力

  • 原書房
  • 東京大学大学院
    総合文化研究科 教授
    山本史郎